美と恍惚の世界へと誘う、第3の音媒体

カセットを駆る聖戦士たちっ!


 中西部アシッドの失速後、こともなし
のテクノ界。海外からの新譜にも、ガッカ
リすること多し(マジで)。むしろよっぽ
ど面白いのは、国内カセットレーベルの
無軌道ぶりだ。さーみんな、アナ〜キ〜
で行こ〜! (問合せ先等の情報は、文
末に)

●toy LAbel
 今年4月から活動、珍妙+チ〜プを合
言葉に、早くも3本のオムニバスを出し
ている関西テクノキッヅ団(今後も続々
リリース予定)。その首謀者は、京都の
小野寺隼平クンと滋賀県の中島敦クン。

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 toyの両巨頭、上・小野寺
 隼平(実はアニメマニヤ)
 下・中島敦(謎の電算鬼)

 トリガー/トランソニック系とケンイ
シイの影響を自認する小野寺クン(芸名
chrono/Queueなど)の作品は、歪められ
圧縮された奇妙な電子音が独特の哀愁を
たたえた不可思議な空間を描き出し、洗
練されたリズムがそこに運動性を与える。
一方、猟奇パソコン少年の中島クンは、
どこに音楽的ルーツがあるのやら。意味
もなく不要のプログラムを書きまくりオ
モチャを積んでは崩すように、彼はあれ
これの芸名(Z80A/Egg Eater/Muting 
Muteなど)で奇怪な曲を書きたおす。中
島クンらしい作風というのは確かにある
のだが、にもかかわらず作品と彼自身と
の間にはハッキリと距離があり、彼はそ
の距離を聞く者にも保たせながら音によ
る「体験」(狂人のプログラムしたゲー
ム!)を促す。彼のZ80A名義作(Z80Aと
は、MSXパソコンに搭載の8ビットプ
ロセッサ)は安物電脳が暴走する悪夢で
あり、逆に最近のミューティングミュー
ト名義作は比較的「メロウ」な音楽性を
持っているとしても、そのどちらも彼で
あって彼ではなく、ただ浪費された力の
痕跡があるばかりなのだ。

 そしてこのレーベルには竹下誠、三上
友樹、田中麻利夫などの才能も結集して
おり、まっと〜な人々には彼らの作品の
方がアピールするかも。遅れていたオム
ニバス第2弾『through?』(TOY-002)も登
場したので、Z80A作品を収録の001や003
と合わせ、ぜひ一聴をお奨めする。

●neji
 ココは、『through?』にも力まかせの
力作を提供していたキュープラス・平川
毅のレーベル。まもなくココからニコニ
コ殺人団(詳報はこちら)のEP『東京
破亜怒硬亜連合』がリリースされるハズ
なので激しく期待、追って紹介。

●メディシンケース
 ハイパーリッチ所属のメディシンケー
スは、自主カセットEPをショップ33で
発売中(図)。工業メタルからトランスを
経て、ヘビーなダブ/トリップホップに
行き着いた現在の音楽性を収録している
が、本誌の見方ではサンプラーの歪み音
より、シンセ音のつややかさに彼らの味
がある。お色気満点。

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 MEDICINE CASE「MASTER MIND」MCT003
 実に美しいラベルだが、よく見ると誤植が…

●Tetor=Pod
 ミニコミ『テトラ・ポッド』で活躍の大
原理クンたちのカセット(以前、33で販
売)を聞いてみたら、これが強烈にチ〜
プ+ロ〜ファイで大感動。シカゴ風やT
R606+MS20のポコポコもさることなが
ら、「猫オバケ」という作品はディープ
パープル風アシッドに合わせて(?)猫が
ミャーミャー鳴いているだけ。しかも曲
の進行に従って、猫が不機嫌になってゆ
く様子が妙にリアル。後で聞いてみたら
やっぱり、「リアルタイムで猫をイジメ
ながら作りました」とか。ああ、これぞ
カセットメディアの王道。「アシッド・
シュタイン」名義で(続きはこちら

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